クロスファンクショナルチームで新たな価値創造が求められる時代に対応
不確実で複雑化する現代のビジネスシーンでは、一つの専門分野では解決できない問題に直面することが多い。そのため異なる専門知識を持つメンバーが集まるクロスファンクショナルチームが求められている。コンサルティングファームでも、それは同様だ。デロイト トーマツではグループが有する知見やサービスを融合し独自の価値を生み出す戦略「MDM(Multi-Disciplinary Model)」を推進している。
「今はクリエイティブ×コンサルティング×テクノロジーというコラボレーションも増えています。」そう話すのはDeloitte Digitalのエグゼクティブ クリエイティブ ディレクターの八代 圭だ。
企業変革の伴走支援をする中で、もはやテクノロジーは外せない。しかし、新しいアイデアやワクワクする仕掛けづくりは戦略とテクノロジーだけでは難しい。そこにはクリエイティブの要素が不可欠だ。
「クリエイティブはコンサルティングやテクノロジーをつなぐ接合点にもなりうる」と八代は話す。「顧客もアドバイス以上の具体的な成果を求めるようになってきています。実際の製品やサービスの開発に携わる機会もあり、コンサルタント、エンジニア、クリエイターとの相互連携が重要です」
Deloitte Digitalディレクターの竹野 純平は経営コンサルティングファームならではの上流工程の知見と、システム開発、運用・保守のノウハウを合わせたEnd to EndのSalesforceソリューションを提供している。
「私のチームで主にご支援している業界の一つが公共セクターです。具体例を挙げると、新型コロナウイルス感染拡大時に、多くの自治体の各保健所では陽性者の入院・療養先の調整業務が逼迫(ひっぱく)していました。この未曽有の状況を受け、Salesforceをベースとした『COVID-19陽性者管理ソリューション』を構築しました」
竹野たちは業界・業務を軸に「Connects powered by Salesforce」という形でソリューションのポートフォリオを整備している。その中にある官公庁・自治体の業務を最適化するソリューションが「GovConnect」で、このシステム開発でも用いたという。
2023年度には「GovConnect」の「住民CRM」機能を活用し、奈良県のスーパーアプリを構築した。奈良スーパーアプリは情報発信や電子申請、相談予約、施設予約などの機能を持つ。
「行政の場合、ターゲットはそこに住んでいる方なのでライフスタイルも千差万別です。誰もが使えるアプリにしなくてはならないと考え、八代たちのクリエイティブのチームとUX/UI設計を行いました」
普段からスマートフォンを使いこなすような人から、最近スマートフォンを手に入れた人まで、さまざまな住民が迷うことなく利用できるようにする――。そのためには、戦略×テクノロジーだけでは到達できない山がある。その山を、クリエイティブの力で乗り越えた。
奈良スーパーアプリの主な機能と画面イメージ
「ユーザー体験を意識し、創意工夫をこらして使いやすいものを提供してほしいという依頼は、官公庁を始め公共セクターでも増えてきています。これからは行政との取り組みでもクリエイティブの力は欠かせなくなります」と竹野は話し、八代たちとのコラボレーションによる成果に今後も期待を寄せる。
Deloitte Digitalディレクター 竹野 純平
コンサルティング×クリエイティブで企業や社会変革に挑む
「先ほども申し上げたとおり、直接的にビジネスを変えていくのはコンサルティングとテクノロジーの力だと思います。経営とテクノロジーは今や直結している。クリエイティブはそれらの接合点。経営で実現したいコンセプトを具体化していくのがクリエイティブの仕事です」
そう話す八代は、コンサルタントと共にそのコンセプトの具現化で変革に寄与している。具体的な取り組み例が、セイコーエプソンのコーポレートブランディングだ。
「エプソンは企業としてCO2の削減に取り組むだけでなく、作っているプロダクトそのものが環境に寄与できるものが多いのです。例えば同社のインクジェット技術は、印刷時に熱を使わないため電力消費が抑えられ、消耗品や定期交換部品の少ない、省資源化を実現しています。また、同社のデジタル捺染(なっせん)は従来の方式と比べて作業工程が少なく、しかも、短納期の印刷にも対応できます。売れ残りや廃棄ロスの削減にもつながり、環境負荷を低減できます。サステナビリティを強く意識している企業でもあり、このことをもっと伝えていく必要がありました」
八代たちはコンセプトの策定から、コピー、ロゴデザインなど具体化に取り組んだ。
「この時、サステナビリティ文脈を意識する必要があったため、過去にSDGsの策定にも関与したメンバーを含むデロイト トーマツのコンサルタントたちが戦略策定に動きました。国連がどのような要求をしているのか、背景を基に戦略を構築し、それをクリエイティブに落としていく。この上流プロセスがあったからこそ、クリエイティブチームも本質的な方針と向き合え、これまでにない表現を生み出せました」
エプソンのコーポレートブランディングの取り組みはグローバルで公開されている。
八代たちが今、まさに取り組んでいるのが、クリエイティブ・デザインの知見経験の結集とコンサルティングやエンジニアリングとのコラボレーションの進化である。今年の1月には、デロイト トーマツ デザイン メタ・マニエラ(D.Design)がグループに参画した。
「Deloitte Digitalでクリエイティブの知見を生かして日本企業をグローバルで輝かせたい。これまでそう思って仕事をしてきました。現在、自分がやりたいと思っていたことの8割くらいは実現できていますが、残りの2割を実現するもの、それがD.Designです」
Deloitte Digitalエグゼクティブ クリエイティブ ディレクター 八代 圭
クリエイティブの職人集団D.Designがもたらすもの
「上流のコンセプト策定から携わりたくて、私はDeloitte Digitalに参画したのですが、実際にそれをやっていると世の中にどうアウトプットするのかも見てみたくなる。これは私に限らず、クライアントも同様で、クロスファンクショナルチームでやってほしいというニーズの高まりもあり、生まれたのがD.Designです」と八代は話す。
D.Designはビジネスやクリエイティブの戦略を理解した上で、具体的な形に落とし込むプロフェッショナル集団だ。グラフィックデザイン、デジタルデザイン、UX/UIなどクリエイティブ・デザイン領域における様々な経験・知見を有している。そのため、クロスファンクショナルチームでは、戦略やアイデアを生むだけでなくそれを実行に移すところまで対応できる。
企業が直面する課題が複雑で多様化している中で、異なる専門家同士がチームとなり一つのプロジェクトに携わることは当然といえば当然だろう。しかし、専門性やバックグラウンドが異なる分、互いの理解や協働には労力もかかるのではないか。
「もちろん手間はかかります。しかし、複雑化する課題に対して解決をするためには、オーダーメード型で向き合う必要がありますし、実際にかけた手間以上の成果を生み出せることも経験で分かってきています」と八代も竹野も口をそろえる。
八代は現在のDeloitte Digitalを「自分がやりたいと思った仕組みを創り出せる、度量の広い組織」と話し、それが魅力だと話す。「D.Designも参画したので、デロイト トーマツを一流のプロフェッショナルファームとしてだけでなく、クリエイティブでも一流にしていきたい」と目標を話す。
竹野は「公共のプロジェクトは対象が時として全国民となる。いわば1億人相手のサービス。規模的に大きなものであり、そこに社会課題を解決していくというやりがいもある。自分を高められる場と捉えているので、興味がある人はぜひ一緒に働いてほしい」とほほ笑む。
それぞれの領域だけでは解決できなかった課題を、専門性を持ちながらチームとなって向き合い、新たな価値を生み出す。Deloitte Digitalの連携体制の強化によって、これまでにないアウトプットを見られそうだ。